お役立ちコラム

【コラム】中小企業が今すぐ取り組むべき「業務の標準化と仕組み化」

1. 属人化の真因と見逃されがちなコスト:なぜ今、解消が経営課題なのか

「属人化」とは、「この仕事はあの人にしかできない」状態が増え、その人が休んだり辞めたりすると仕事や売上が止まってしまうことです。中小企業では「ベテランのAさんしかわからない」「見積りはBさんじゃないと決まらない」といった状況に心当たりがある方も多いでしょう。困る理由は単なる引き継ぎの難しさだけではありません。見えにくい損失も生じます。

・機会損失:特定の人の忙しさで判断や提案が遅れ、売上の上限が「その人の時間」で決まってしまう
・品質のばらつき:経験や勘に頼ることで、成果物の品質が一定にならず、やり直しやクレームが増える
・リスク増大:キーパーソンの不在で重要案件が止まり、会社の継続性が弱くなる
・成長のブレーキ:新規事業や拠点展開のスピードが落ち、チャンスを逃す

立ち上げ期は個人の工夫が前進力となりますが、規模が大きくなれば、個人のコツを会社の仕組みとして残す必要があります。創業期の強み(俊敏さ)と成長期の強み(再現性)は両立可能です。今がそのタイミングか、次の項目でチェックしましょう。

・「感覚」「コツ」「経験」がよく出る
・人によって時間や品質が異なる
・会議で「誰がやるか」を議論しがち

・新人が一人前になるまで長い
・失敗やクレームの原因が人単位になる

3つ以上当てはまれば属人化が進んでいるサインです。

2. 標準化・見える化・自動化の三位一体で進める:現場に定着するステップ

掛け声やルールだけでは前に進みません。「楽になった」「結果が出た」と現場が実感できる設計で、段階的に進めましょう。おすすめは「標準化・見える化・自動化」を小さく速く回す方法です。

1.標準化(やり方をそろえる)
・範囲をしぼる:売上への影響や失敗のダメージが大きい、頻度が多い業務から1〜2個に集中
・成功パターンの棚卸し:結果を出している人に聞き取り、準備→実行→確認の行動と判断基準を抽出
・最小限の標準作業書:A4で2〜3枚で、「目的」「手順」「判断のコツ」「NG例」「チェック項目」を明快に
・テンプレートを用意:見積書・提案書・メール文面などの型を統一し、追記欄で柔軟性を担保

2.見える化(状況を共有できる形に)
・プロセスマップ:開始から終了までの流れと担当者を一枚に。ホワイトボードや、PowerPointでOK
・KPIダッシュボード:営業なら「案件数」「段階の進み具合」「見積り提出までの日数」「受注率」など。週次更新でも十分
・レビューのリズム:毎週15分で指標を1つだけ深掘りし、「なぜ」「次に何を試すか」を決めて翌週検証

3.自動化(手作業を機械に置き換える)
・簡単なRPAやスクリプト:Excel整形、PDF送付、メール振り分けなどの繰り返し作業から置き換え
・顧客管理(CRM)/メール支援(MA):入力ルールとステージ管理を徹底し、自動配信とリマインドで抜け漏れを減らす
・チェックリスト×自動通知:未完了があればSlackやTeamsに自動で知らせる

3. 人の活かし方と評価の見直し:コツを「個人のもの」から「会社の資産」へ

属人化の解消は、業務改善だけでなく「人の力の活かし方」を変える取り組みです。ベテランの腕前を奪うのではなく、会社全体の底上げにつながる形で共有の資産にします。

・役割分け:流れの責任者(プロセスオーナー)、標準化のまとめ役、
 教育担当を定義し責任を明確に
・知恵の集め方:毎月の勝ちパターンレビューで学びをナレッジベースに
 蓄積
・教育の仕組み化:90日間のオンボーディングプログラムで目標・
 演習・ロールプレイ・OJTを設計
・評価の見直し:個人売上だけでなく、標準化への貢献、知恵の共有、
 後輩育成も評価
・表彰と動機付け:テンプレートや自動化に貢献した人へ改善ポイントや
 表彰を付与

重要なのは、ベテランへの敬意です。「あなたのやり方を会社の資産として残したい」と伝え、意義とメリットを明確にしましょう。

4. 失敗しない進め方とツール選び:小さく始めて大きく育てる

継続して育てるための7つのコツ

1)経営のコミットメント:目的・範囲・優先順位を文章化
 (例:「今期は見積りの流れをそろえる」)
2)関係者の巻き込み:現場・管理部門・ITなどで改善チームを組み、
 毎月30分の進捗確認
3)まず試す:新ルールやツールは試験チーム(パイロット)で
 2〜4週間運用し、手直ししてから拡大



4)ツール選び:Excel/Google SheetsやTeams/Slackなど慣れた
 道具から開始。大型のERPやSFAは段階導入
5)入力は最小限:意思決定に使う項目だけに絞り、3カ月後に見直す
6)権限設計:顧客情報・価格・契約書はアクセス権限を役割別に管理
7)継続の仕組み:四半期レビューで「やめるルール」「更新するテンプレート」を決め、運用を軽くする

「人手が限られていて難しい」と感じる方も、まずは身近な一歩から。たとえば見積りなら、
・見積りのテンプレートを一つに統一
・「提示までの期限」を3営業日に設定
・例外承認のチェックリストを用意
・週次で「提出遅れの理由」を一つだけ潰す

これだけでも、ばらつきや遅れは減ります。成果が出たら社内で共有し、次の一歩へ。属人化の解消は「仕事のやり方を共通言語に翻訳する」営みです。標準化で土台、見える化で学び、自動化で余力を生み、役割と評価で価値を広げる。小さく速く回して、しなやかで強い組織を作っていきましょう。

まとめ

属人化の解消は「人を入れ替える」話ではなく、「仕事のやり方を会社の共通言語に翻訳する」営みです。
標準化で土台を作り、見える化で学びを深め、自動化で余力を生み、役割と評価で価値を広げる。これを小さく速く回すことで、組織はしなやかに強くなります。競争が厳しくなる今、優秀な個人の力を「仕組み」に変えることが、持続的な成長の鍵です。
ぜひ今日から、一歩を踏み出してください。今ある人材と知恵を、より大きな成果に。


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