人事部門の業務とDX

前回まででバックオフィス業務のうち、 経理部門と総務部門のDXについてご説明しましたが、今回は「人事部門」です。 人事部門の業務を改めて整理しつつ、近年のトレンドも織り交ぜながら、 人事DXを考えていきましょう。

人事部門の全体像

 人事部の役割は大きく、 「採用」 「教育」 「人事企画」 「労務管理」の4つに 分けることができます。 全体ミッションは、「会社にとって必要な人材を獲得 育成し、会社の生産性を向上させること」で あると言えるでしょう。

総務の主たる役割

  採 用  
会社が必要とする人材はどんな人材か、 ということを明確にした上で、そのよう 採 な人材を獲得することが重要です。
近年では、「デジタル人材」の採用が 課題となっています。

  教 育  
備新たな人材の獲得だけでなく、既存の 人材に効果的な教育を実施し、能力の 開発、 最大化を図ることもまた、生産性の向上には重要です。 会社全体のDX実現のため、 この「教育」は必要不可欠だと言えます。

  人 事 企 画  
社員のモチベーションを 高めながら、それぞれの適 性や能力を発揮してもらう ためには、適切な人材配置や評価、 昇給を実践することが重要です。

  労 務 管 理  
保険関係の手続きや 福利厚生など、社員が働き やすい環境やサービスを提供 する役割です。

社内各所とのかかわり

人事部は社員の一人ひとり、各部門との やり取りが多いと言えます。 例えば、 有給休暇の申請などについては、それぞれの部門長とのやり取りが必要になりますし、就業規則や人事制度の構築などについては、経営層とも連携して検討するこ とが求められます。
そのような仕事の性質上、各所とのコミュニケーションを円滑なものにすること が非常に重要です。 社内の総合窓口とし て、関係者との連携を図りましょう。

人事の課題とHRテクノロジーの活用

「HRテクノロジー」って何?

HR (Human Resource: 人的資源) は 「人事部門」を指します。
それにテクノロジーを組み合わせた 「HRテクノロジー」 とは、AIやビッグ データ、クラウド等の先端技術を活用し、 人材の採用や育成、配置といった 人事のあらゆる業務の効率化を目指すサービス、あるいは手段とされてい ます。

日本の生産年齢人口の減少、世の中の急速な変化への対応といった課題を受け、近年HRテクノロジーは注目を集めていま す。先述の通り、 採用管理システムや人事評価システムは代表的なHRテクノロジーであり、以前に比べるとテクノロジー自体 が身近になっていることから、これらのテクノロジー導入のハードルは下がってきていると言えます。

人事の課題とHRテクノロジーの活用

採 用

会社にとって必要な人材を獲得するため、 採用に力を入れている企業は少なくありません。 一方で、 企業説 明会の開催や書類の選考、面接といったように、 採用に至るまでのプロセスの中で多くの労力・コストがか かることも事実です。
近年では、会社説明会や面接をWeb上で行う企業も多くなっており、 企業側からの質問に回答する様子を応募者自身が録画し、録画デー タを企業に送付するといった形態も見られます。 履歴書 (エントリー シート)も Web 上で登録するケースが多く、採用におけるデジタル 化が進んでいると言えます。
採用フローをWeb上で行うことは、もちろん採用側の負担軽減にな りますが、応募者側としても同様です。 場所を問わずに説明会などに 参加できるという気軽さから、集客力の向上も期待できます。

教 育

我が国では人材不足が深刻な問題であり、人材の獲得が 一層困難なものとなっています。 そのような状況の中では、採用による 新規獲得のみならず、 社内研修等を通したスキルアップ、リスキリング による既存戦力の強化も非常に重要です。
社員の属性データを統合的に管理し、それぞれの社員に合った研修 プログラムが選択可能となることや適切なアドバイスを受けられるこ とで学習意欲の向上、学習習慣の定着も期待できます。

労務管理

社員が安心して快適に働ける環境を整備することは、 生産性の 向上を図る上でも非常に重要であり、中でも社員の健康管理は その中核を成すものです。 Web ツールを利用して健康状態に 関するアンケートを取れば、 社員は気軽に回答することができ、 担当者としても適切に社員の健康状態を把握、 フォローできます。 社員の病気等を未然に防ぎ、 職場環境の改善にもつながります。 この部分については、 総務部門の役割と重複するところがありま すので、総務部門と連携することも重要です。

HRテクノロジー導入のメリット

最大のメリットは 「業務の効率化」です。 例えば、 勤怠管理システムを導入、クラウドで給与計算ソフトと連動させれば給与 計算を自動化することができます。 残業時間をリアルタイムで把握し、手当等も適切に反映できることから工数の削減のみ ならずコンプライアンスの強化にもなる言えます。 また、人事評価システムを利用することで、実績や特性、研修歴など、あ らゆる属性データを統合、可視化することが可能なります。各社員に適した人材配置や異動、課題対応型の組織づくり、つ まり戦略的人事の実現です。

例1 勤怠管理システム導入のメリット

クラウドで
  給与計算を連動

リアルタイムで
  残業を把握

例2 人事評価システム導入のメリット

実績や特性
  研修歴などのデータ

データの
  統合と可視化

HRシステム導入のコツ

HRテクノロジーは、大規模な設備投資が必要なく、気軽に導 入できるという利点がありますが、 見切り発車は禁物です。HR テクノロジーに限らず、導入の際には、現状の課題や導入の目的ないし目標値を明確にしておくことが重要です。そうでない と、導入それ自体がゴールになり、せっかく導入したシステム 等が最大活用できない、ということにもなりかねません。テクノロジーの導入はあくまで目的を達成するための手段・ツ ールに過ぎず、しっかりと業務に落とし込んでいかなくてはなりません。また、実際に使ってみないと分からない部分も多々 あります。すぐに効果が出ない場合も確実に検証し、効果を高 めていくことが重要です。

六甲商会はDX推進パートナーとなり、お客様のデジタイゼーションの見直しから始め、デジタライゼーションへのステップアップのお手伝いをいたします。